先日、東京駅で福島への切符を買いに並んでいると、
背中から「マジかよ!どうすれば良いんだ!ああ・・・そう言う事か」
とかなり大きな声が聞こえて来た。
振り向くと携帯を耳に当てリュックを背負い、
キャップを被った小太りの少年がそこにいた。
切符を買って時間もあったので後ろからしばらく眺めていると、
彼は券売機の上にある路線図を見ながら右に左にうろうろしては、
「急いでいるって言うのによう!間に合わないんだよ!」と携帯の誰かと話しているのだった。
せかせかとしたその様子はまるでビジネスマン。
携帯を持つ彼の肘は肩よりも高かった。
まぁ、
誰が見ても単純に切符の買い方がわからないんだなと一目瞭然だった。
僕はそんな彼に話しかける事にした。
「どうしたの?お父さんやお母さんは?」
「ええ?マジでどうすれば良いんだよ!わかってよ!」
OK
ため口のパターンだ。
帽子を取って改札の向こうに投げてやろうと思ったが、
子供と言えど相手はビジネスマン。
しびれを切らした方が負けだ。
話しをきけば、
彼は郡山に住む祖父祖母、そして従兄弟の元へ一人で向かうと言う。
やはり新幹線の切符の買い方がわからない東京生まれの小学6年生だった。
山の手と郡山では訳が違う。
とりあえず郡山への切符をかってあげて(その間電話の向こうのお母さんに散々謝られた)、そしてホームへと二人で向かった。
ギュウギュウに閉まったリュックのベルトを更に締めてやりたいのを我慢しながら・・・。
彼が「時間がない」と言っていたのは水の事だった。
何を勘違いしたのか彼曰く郡山には水が少ないという。
彼のリュックにはペットボトルの水が三本入っていた。
他にはNintendoDSもしっかり二台入っていた。
郡山の従兄弟とそれで遊ぶと言う。
それらを届けるのが彼の使命らしい。
「テレビ見ててわかんないの?」
どういう事だよ。
新幹線を待つ間の話しは一体なんだったのだ。
僕が何処へ向かおうとしているのかまるでわかっていないらしい。
もう限界だったので電話のお母さんに挨拶と
「今度は事前に予約入れておいた方がいいですね」と一応嫌みを言って、
彼にも「じゃあ、」と別れを告げ自由席に向かった。
「マジで助かったよ。感謝するね。」
僕が買ってあげた水を片手に(水の種類にも煩かった)一息入れながら
彼は安堵の指定席に腰を沈めたのだった。
まぁ、お前の人間性という意味では一つも"助かって"はいないがな。
・・・何を言っても完全に僕の負けだった。
小さなビジネスマン。
彼の目的がどのぐらい達成されたかはわからない。
しかし窓から見える郡山のホームでみた彼は、
おばあさんの手を優しく引っ張っていた。
親戚か見ず知らずか、
立派なもんで新たな商談相手をみつけたのだろう。
強い目的を持つ人間には必ず人が寄ってくるのだ。
健闘を祈る。
そして福島の為にありがとう。
写真はゆりかもめからお台場です。