ある日うちのばあちゃんが
「この箱ぶっつぁいても良いがい?(破いてもいいかい?)」と訪ねてきた。
僕はいちいちめんどくさいから「もう勝手にやってよ」と言って自分の作業に戻った。
僕にはやらなければいけない事が沢山。
震災とはいえブログをやっているとはいえ、続けていた事はやめちゃいけない。
黙々とPCに向かう。
ばあちゃんは箱を破いたり、片付けしたり、
そんな事は僕の崇高な作業に比べれば何の意味も無いのだ。
するとうしろから「これいいな」とか「じぇいたいのだ」とか聞こえてくる。
うるせー。
自衛隊なんか空にも陸にも今はいっぱいいるじゃねぇか。
黙ってやれ。
背中が静かになったと思った。
どうやら姿見のある部屋に行ったらしい。
戻ってくると「良いよな?」とばあちゃんが訪ねてきた。
そこにはロードオブザリングのホビット族が僕のUSN WATCH CAPを被って立っていた。
しかもそのキャップは袋にいっぱい入ったやつで
折り返しにアメリカ人のサインも無い正真正銘のデッドストックだ。
床にはホームアローンのマコーレー・カルキンの如く無惨にも破られた袋が散乱していて、
他の物もそれはそれは残念な事になっていた。
いったいガンダルフは何処にいると言うのか?
早く魔法で元通りにして欲しい、弟に何て言えば良いのか。
震災のあと必要最低限の荷物を詰め込んで逃げる準備完了。
しかし時間が経って少し余裕が出てくると色々な物が気になってくる。
その一つがヴィンテージ古着の段ボールだった。
弟と中学生の時からあつめたコレクション。
最早何が入っているかも分からない。
穴でも掘って埋めようかと思うぐらいだった。
あの時ガンダルフを呼んで魔法で穴を掘ってもらえば良かったのだ!!!!
今お母さんはあの丈の長いサーマルをワンピースの様に着て洗車をしている。
じいちゃんはもの凄く古いUSの下着で魚に醤油をかけているし、となりの小学生の女の子はまた古いフランス製のスッキパーで泥が混じった雪で大暴れしてる・・・。
おまけにそれらを新品同様の超貴重な真っ赤なプリントネルシャツと一緒に洗っている!!!
どうなってんだ。
海外の人は日本人は礼儀が正しいとか、
何故暴動にならないのだと驚いている。
しかしそれは嘘だ。
僕の家では略奪がおこっているし、ホビット族が僕のコレクションを荒している。
そして今ホビット族はタクシードライバーのデニーロが着ていた様なミリタリーブルゾンで畑に出かけているのである。
ガンダルフ。
早く帰ってきておくれ。