医源病論で医の在り方を批判し続けたイワン・イリイチに
『テキストの葡萄畑で』という
既にタイトルからして〈美しい〉本がある
私たち(?)現代人の読書離れに危惧を抱いて
中世の修道僧ユーグという人物の「学習術」から先ずは説き起こし
それ以降の読書習慣の経緯を掘りさげた書物だけれど
〈知る〉ことに熱中している人のカラダは微光を発する?
そうかもしれない
小暗い僧院の高窓から落ちかかる僅かの光や
鎮まりかえった夜闇の底で
ジョルジュ・ド・ラトゥールが描いたような
蝋燭の灯りをたよりに
イエスの教えを〈繙いている〉ユーグの姿は
知ることの喜びにより微かな光を帯びていたようだ
けれどその種の〈弱電現象〉は
私たち(?)現代人のヤワな視力では
捉えきれない?
そうかもしれない
なぜなら
思考することへの
ガタンと千桁外れるほどの
破局的な段差を孕んだ
出発点であるかもしれない
真の暗闇や
真の沈黙を
私(たち?)のほとんどは
まるで知らないから
(註)ジョルジュ・ド・ラトゥール...
フランス17世紀の画家。
「悔い改めるマグダラのマリア」や「聖ヨセフ」等々の絵で、
蝋燭の灯りの元での深い陰影に富んだ画風で知られる。
言葉Y先生、写真K