事故は僕らの故郷福島県で起きた
あれから
沢山の人が沢山のことを沢山の方法で県外へ伝えた
あれから
僕らも同じ様に伝えたが
故郷の行く先々で
震災後の様々な姿に出会う度に
「故郷の知らない事が沢山ある」
と思う様になった
時間とともに故郷は複雑に様々に
その中で
僕らはあの時間
故郷のある地域で当事者だった
僕らはその先々
故郷のある地域で旅行者だった
そして先日
僕らはある地域で周辺者になった
福島は広い
けれどもう、それは理由にはならない
故郷を思うなら
この静かなその後の世界で
故郷の知らないを知ろうじゃないかと思う
知れば奥ゆかしくもなれるもの
知れば過去へ巡るもの
震災以前から変わらない故郷を知ることは
再び大河へ戻った故郷への
僅かばかりの抵抗になるかもしれない
故郷のことを知らなかったことが
こうした事故へ繋がった要因もあるんじゃないか
知らなければ好きにも嫌いにもなれない
これから僕は
伝える側から知る側になりたいと思う
それは震災以前
世界中に知らないを探していた頃と同じく
同じだけど
今は知らないが故郷に沢山ある
とても贅沢なことだと思わないかい
外へ伝えるよりも
魅力的なことだと思わないかい
写真提供Sさん