2011年7月19日火曜日

「あの時」

美しい歯車の時刻であった.....

死人がひとり岬のうえの動かぬ雲に頬杖をつき

黄色い鳥の足をうごかしていた

砕けた鏡の時刻であった.....

月のない夜の伽藍の地下で巨大な氷河のクレヴァスが

深々と口をあけ白い臓器を覗かせていた

幽かな溜め息の時刻であった.....

魚に説教するパドヴァの聖者の青い頭巾が

泡立つ北の海のほうへと微熱を帯びて傾いていた

すべてのものの反転の時刻であった.....

空一面のアルミ・フォイルをクシャクシャに揉んで

数え知れない雷が轟きはじめていた

そしてそれから.....

虚空に浮かんだ

巨大な耳だけの時刻であった

言葉Y先生、写真K