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「レッスン」

ぼとりと落ちる音
アンジェイ・ワイダの見方によるなら
登場型や
退場型など
ひとにはいろいろあるようだけれど
「これでは毎日日曜日」
とか
「ほら、ほら、これが僕の骨」
などなどなどと
寄る辺の無さを鼻唄まじりにお道化していた
中也さんと較べてみると
宙に浮くのがみな下手くそで
そうだ こんなの思いだす
----或る一本のアクション映画の旅客機内のシーンでの
深傷を隠した瀕死の主役(日活映画の松田優作サンだったっけ?)の
意識朦朧の最後のセリフ

「木星には何時に着くのか」
  #
男の奇妙な問いに驚き
機内後部でウロたえている客室乗務員たち
さらに乗客も浮足立って
男の周りに空席が目立つなかでの
そいつの孤独な死----エンド・マーク
 #
ほらほら どいつもこいつも騒ぐんじゃねぇ
ホトケのみごとに〈浮いた〉セリフは
日頃の眠気や
どっかり積もった目玉のウロコを
こそぎ落としてくれそうな代物ではないか
  #
巨大惑星と柩との不意の合体!
そうだ少しはそのようにして
(「カワイ〜」「ウッソ〜」「マジ〜」という
厳選三語のブルトーザーで
セカイを総なめしてゆくのは勝手だけれど)
時には色々小骨やゼンマイを出したり入れたり
(何処から何処へだ?)
せめて首からうえのゲノムでも組み換えて調教しなおせ

そうだゲノムを調教しなおせ

春の日溜まりのぬるんだ水に
トポーンと浮かんだ蛙のように身じろぎもしない
〈あなた〉のお尻の〈カワイ〜〉怠惰な青痣や
朝の電車で掏摸にやられた空の財布の想い出等々も
一切合財
めちゃな速さで拡がってゆく
巨大星雲の最先端へも転写しながらだ
とはいうものの
耳を澄ませば
あちらこちらで
相も変わらず
宙に浮くのが下手な奴らの
ぼとりと落ちる音

言葉Y先生、写真K

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